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競技用サドルの第一人者「CWD」とは?

数ある馬具・乗馬用品メーカーの中でも競技用サドル(鞍)のスペシャリストとして名高いのが「CWD」です。1998年に創業したまだまだ若いメーカーですが、作り出す鞍の使いやすさや高機能性から、一躍、著名な馬具・乗馬用品メーカーとして名乗りを上げました。ここではCWDの概要や、提供される鞍・開発製品、それら製品の開発環境について解説していきます。

「CWD」の概要

「CWD」は1998年、世界的なハイブランドとしても知られる「HERMES(エルメス)」から、独立するかたちで創業したフランスの乗馬用品・馬具メーカーです。創業以降、特にスポーツ性に力を入れた「ハイレンジサドルメーカー」として、その名を馳せてきました。
CWDの名が世に知られる事になった一番大きなきっかけは、馬術競技会における成績といえるでしょう。公的機関・民間機関を問わず様々な研究機関と協力し、馬や人間の生体工学や運動病理学に基づいて制作されたCWD製サドルは、著名な馬術競技会で高いパフォーマンスを発揮し、それまでにない好記録を残しました。その結果、トップアスリートたちはこぞってCWDの鞍を導入するようになり、現在では競技用サドルの代名詞的存在になっています。特にフランス、イギリスをはじめとしたヨーロッパや、アメリカの乗馬競技シーンにおいては大人気で、世界トップレベル騎手の70%ほどが、CDWの鞍および乗馬用品を利用しているともいわれます。

世界初「女性専用」の鞍を開発

世界初の女性専用乗馬鞍を発明したのも、CWDの偉業のひとつです。

鞍が始めて人類史に現れてから幾千年。長い歴史の間に様々なデザインの鞍が発明されましたが、驚くべき事に、女性専用乗馬鞍というものは長らくこの世にありませんでした。もちろん装飾的な意味合いで女性用の鞍はありましたが、「機能性」という面で女性に最適な鞍は、CWDが開発に着手するまで、この世に存在しなかったのです。

CWDが人の生体工学、運動工学に基づいて開発した女性専用乗馬鞍「2Gs MADEMOISLLE」は、女性特有の骨盤形状にフィットするようデザインされた軽量・スリムな乗馬鞍です。

一般的に乗馬中は背骨を真っ直ぐ保つ必要がありますが、女性は骨盤の重心が男性より少し前にあります。そのため従来の鞍では、女性が長く座っていると、恥骨部分により大きな負担がかかる傾向がありました。それを避けるため女性は、男性よりさらに前かがみになって、ちょうど良い姿勢を見つける必要があったのです。

しかしCWDが開発発表した2Gs MADEMOISLLEでは、その問題は解消されています。鞍は女性の骨盤に合わせたスリムな形状になっており、恥骨にかかる負担がうまく分散するようになっています。これにより女性の乗馬姿勢の縛りは、格段に少なくなったのです。2Gs MADEMOISLLEは競技シーンでもたびたび見られるようになり、競技会において女性騎手がより高いパフォーマンス・好記録を出す機会も、以前より随分増える事になりました。

最新鋭の「スマート鞍」を研究

これまでの既成概念にとらわれない、野心的な試みが多いのもCWDというメーカーの特徴です。前段で紹介した2Ds MADEMOISLLEもその一端ですが、CWDのプロジェクトの中にはそれをはるかに上回る、驚くべきものがあります。そのひとつが「iJumpプロジェクト」です。

2018年のCES(アメリカ、ラスベガスで毎年開催される最新電気機器の見本市)には、例年ではとても見られないような光景がありました。電気機器の展示会場であるCESの会場に、何ゆえか「馬」の姿があったのです。これこそCWDが開発した世界初の「スマート鞍」、「iJump Saddle」のお披露目会で現れた光景でした。

最新鋭の乗馬鞍であるiJump Saddleは、「スマホと連動する」まさに前代未聞の乗馬鞍です。馬にiJump Saddleを装着させる事によって騎手やその他スタッフは、馬の速度やジャンプの高さ、走る際のステップリズムからトレーニング後の回復の経過までをもリアルタイムで、細密に知る事ができるのです。これによってトレーニングの結果や進捗を事細かに記録する事ができ、本番での効果的なパフォーマンスの発揮に繋げることができるといいます。現段階ではまだ研究中との事ですが、これが実用化すれば、馬の調教が根底から変わる可能性すらあります。

馬に関する世界最新鋭の研究機関「CWD VetLab」を保持

最先端のイノベーションだけでなく地に足の着いた研究も、CWD製品を支えている大きな力です。その中心にあるのがCWDが擁する研究機関「CWD VetLab」です。

CWD VetLabはフランス国立研究機関(ANR)の支援を受けて誕生した研究機関です。CWD VetLabは、バイオメカニクスの研究者や運動病理学を専門とする獣医、馬具開発のスペシャリストらなどによって構成されており、研究結果は常にCWDの製品へとフィードバックされています。フランス、パリ近郊にあるメゾンアルフォート獣医学校(ENVA)や、ノルマンディーにある馬の自立運動に関する研究機関「CIRALE」など、他の機関との提携も行っており、馬具の開発だけに限らず、馬という生物に対する根源的理解を深める研究も盛んに行っています。

生体工学、運動病理学に基づいて作成された数々の競技用サドル、また前段で紹介した「iJump Saddle」の開発などは、CWD VetLabの地道な研究なくしてあり得なかったものといえるでしょう。

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